第30回名古屋吹奏楽フェスティバル演奏報告

 11月13日,8時30分。役員の集合時間です。主幹の私は当然早めに着くように行くのですがなんと私の到着時にはすでに各校のメンバーが集まっています。春のマーチングフェスティバルでも集合状態は良かったので「今回も…」と予想はしていたのですが,裏切られる事はありませんでした。みんなの意識の高さとメンバーとしての自覚を感じ「フフフフ。」と満足げにほほえんでしまいました。何より嬉しいのは遠目でメンバーが分かると言うことです。補助員の生徒とメンバーが識別できる。8ヶ月一緒に練習をしてきた成果です。

集合後,舞台裏楽屋に移動し第一リハーサル室での音だし,リハーサルです。特に今日は記念バンドの母体として顧問の先生やOB・OGの方を迎えて合同リハーサルをすることもあり,リハーサル時間など他団体より長めとなっています。その上,出番は第V部。体力・気力勝負の一日。本番最後のトリとしてふさわしい演奏が出来るよう担当としては祈るしか有りません。

11時からの記念バンドのリハーサルにBass-Clarinetで参加したのですが,やっぱり演奏するのは気持ちが良いですねえ。ハイスクールのメンバーと一緒に演奏できて満足満足。指揮者としてより演奏者として吹奏楽を愛する私にはハイスクールの練習時,音を聞きながら自分ならどう演奏するのだろうとうらやましく聞いていましたので「やったね。」状態でした。他の参加者の方はどうだったんでしょうか。お聞きしたいものです。そういえばリハ中に参加の顧問の先生から指導を受けているメンバーもいましたね。

舞台裏楽屋は名古屋ハイスクールバンドとハイスクールウィンドアンサンブルの2団体で使用しましたがどちらもお互いよく知った高校ばかりなので,日頃の支部の講習会や合同練習会のような雰囲気でした。全体で一つという感じで互いの楽屋に出入りしてゴッタ煮状態でした。空き時間中のメンバーは仲間と談笑したり,アンケートを書いたり,他団体の演奏を聞きに行ったりと思い思いの時間を過ごしていましたが,ソリストの中には結構緊張してイメージトレーニングに励んでいたりしていた者も有ったのではないでしょうか。

いよいよ本番。一年の成果が問われる時です。オープニングのTPファンファーレがなり美術館の逍遥が始まります。一枚一枚の絵を音で表していきます。プロムナードではバンドとファンファーレの掛け合いがありますね。のびやかなファンファーレと厚い響きのバンド,表現できているかな。友人の遺作を見つめる作曲者の思いや足取りが聞こえてきますか。曲は古城へと進みます。アルトのソロです。本番までにいろいろ考えていましたね。常々長尾先生は自分の思いを伝える演奏をして欲しいと言ってみえました。どうでしたか,自分が出せましたか。 ビドロです。ハイスクールバンド自慢の低音族の出番です。バスクラ,ファゴット,バリサク,チューバ,弦バスこれだけの本数がそろうのはなかなかだと常々私が勝手に誇っていたパートです。力強いメロディーラインが会場を過ぎていくのを感じます。ビドロは虐げられた民衆の苦悩の現われか,はたまた圧政に立ち向かおうとする民衆の地の底からのゆらぎか…。お客様はどちらを感じたんでしょうか。一転してリモージュ。ホルン命がけのタンギング(なんていうとあのねぇと言われますか。),たった4拍の重圧と戦う姿は悲壮というかまるで殉教者。それに続く木管,金管のフレーズ。スピード感と同時にきっちりとした安定したテクニックが必要な場面が続きます。寄せ木造りのような楽譜割り。一つでもずれたり遅れたりすればダブルフッキング状態。綱渡りと表現すると練習不足のようになりますが緻密さが要求される演奏です。そんなスピード感あふれる演奏が一転して宗教的雰囲気の漂うカタコンプに入ります。中低音の和音,木管のメロディー…。広がり,重なり,掛け合い,そして静かに融け合ってゆく。カタコンブのもつ死者の静けさが会場を覆っています。その静けさを断ち切るようなバーバ・ヤーガの小屋スタッカート。エネルギーの持つ緊張と解放。音と無音の対比。やがてそれが次々と広がり不思議な世界が繰り広げられていきます。エネルギーは次々積み上げられていきます。バンドもだんだんアジタート状態になってゆきます。エネルギーはスピードと音圧となって観客席に送り出される。そしてそれが頂点に達した時あの壮大なキエフの大門が開くのです。ハイスクールバンド全員が最初の一音の響きに最大の緊張と豊かさの伊吹をおくり込む瞬間です。叙情的な感じを沢山潜めながら堂々とした音の響きが会場に伝わっていきます。121からの全音符,二分音符の一つ一つが壮大なドラマを描いていきます。フィナーレまで後11小節。そして最後の四分音符。丁寧にひき抜いた音がホールに吸われていきます。

演奏は終わりました。ソリストの紹介がされます。バンドも指揮者も一つの満足感を持っていたと思います。確かに細かな点においては問題があります。ピッチや各種演奏技術などそれは演奏の本質だからできていないのはと言われればその通りです。しかし,メンバーはやり遂げた実感とハイスクールバンドという一つの共同体としての繋がりを感じたのも事実です。当日の参加団体の中でトリとしてちゃんと責任を果たしたと感じています。その後,テキーラの演奏になったのですがエッと周囲から声が出ました。それはテンポが速いというのです。果たしてついてこれるのかと言う心配です。しかし,そんな心配は杞憂でした。ちゃんとメンバーはそのスピードに乗ってリズム感あふれる演奏をしました。特にTPソロは拍手です。ご苦労様でした。記念バンドでも無事2曲を演奏し,その責任を果たしました。

解散までの時間は写真を撮ったり,アンケートを届けたりと各自思い思いに過ごしていましたが解散時には多くのメンバーが役員室や廊下で挨拶の声をかけてくれたました。一年間ご苦労様でした。


一年を終えて・お礼

展覧会の絵を演奏し終えました。これで本年度は無事終了です。アンケートの処理など後始末がまだありますが一区切りという感じです。3月のスタート以来今日までバンドとしては8ヶ月の間継続的な活動をして参りました。立ち上げの準備から数えれば一年です。初めて合同バンドが1年という期間活動できたと感慨無量です。このメンバーでの演奏は一生に一回,まさに一期一会のものです。このバンド自体一期一会で結成されたものです。いろいろないきさつで参加した者が練習を通して一つのバンドになりました。それも今日で解散です。

なにより始めに指導者として毎回メンバーをご指導いただいた長尾先生にお礼申し上げます。また,参加校においてはメンバー選出を始めとして色々ご協力をいただきました。自校の練習日程を変更して練習会場校にとご協力いただいたこともあります。本当に多くの皆様のおかげで無事終えることが出来たと感謝しております。

今回の経験をふまえ次回のハイスクールバンドの進め方を検討し皆様にご呈示したいと思っています。その時はさらなるご理解,ご協力を賜るようお願い申し上げます。

     担当 古田 善春