作曲者から作品に対するエッセイ、および、曲の特徴・解説等

ウィナーズ_吹奏楽のための行進曲
                          作曲者  諏訪雅彦

 2000年の3月から4月にかけて作曲、今年3月と(受賞決定後の)7月、オーケ
ストレーションに若干手を入れ、現在の形になりました。
 最初にラフ・メモを通した時点で、約5分の曲になりそうだったため、いくつかの
ブロックを切り捨てて再構成。その結果、4分弱の曲としては、少し、いろんな要素
を”詰め込みすぎ”になったかもしれません。
 発想段階から私には、この曲のアイデンティティーを支えるための、ドラマ(競技
は不特定)を描いた架空の映画のタイトル・バック…というもので、
曲名の「ウィナーズ」は、そのイメージに由来しています。具体的な”物語”が想定
されているわけではありません。ただ、「ウィン」という結果よりも、そのプロセスや
様々なドラマの方に、よりスポットが当てられているらしきことは、この曲の”空気”
から感じ取っていただけると思います。ひとつだけ…、かなり具体的な”冒頭シーン”
ー忘れられている競技場、朝もやが引いてゆく青いトーンのロングカットーと言うイメ
ージが、ずっと頭から離れずにありました。(が、こういったイメージは、むしろ作曲の
ため
のもので、演奏にあたって、それに囚われる必要はありません)…。
 (一昨年の)作曲中は、(この曲が初めて音になる)試奏審査が、ワールド
カップ開催期間中に訪れるとは、全く考えていませんでした。サッカー・フリークの
私としては、それもこの曲の巡り合わせのように思えてなりません。

                   *

                 【略歴】
諏訪 雅彦   すわ・まさひこ   1959年長野県岡谷市生まれ。
本名・佐藤正。   東京芸術大学作曲科中退。
「ウィナーズ_吹奏楽のための行進曲」で第13回朝日作曲賞受賞