作曲者から作品に対するエッセイ、および、曲の特徴・解説等
イギリス民謡による行進曲
作曲者 高橋宏樹
”グリーンスリーブスを行進曲にしてみたらどうだろう”そんなきっかけをくれたのは僕が 高校の吹奏楽部だったときの講師、湯本清氏だった。彼はとにかくこのグリーンスリーブ スが好きで、高校の定期演奏会のアンコールには今でも必ずやっているほどだ。そんな 恩師である彼のためにも是非この曲をアレンジしようと思った。だがふつうにアレンジして もおもしろくない。原曲とは対照的にノリ良くしてみよう。ジャズ風やラテン風もいいがクラ シカルな感じにもしたい、そこで思いついたのが”行進曲風”だった。 「さてどうしよう」思いついたはいいがこれがなかなか難しい。ずっとグリーンスリーブス というのもなんだか飽きてしまう。トリオまでもたない。そこで考え付いたのが”イギリス民 謡”でまとめるという方法だった。早速、他のイギリス民謡を書き出してみた。スカボロ フェアーやロンドンデリーエア、ロッホローモンドなどいろいろな候補はあったが、その中で もなじみが深いだろうと思われるアニーローリーと埴生の宿を入れる事にした。曲を追加し たとたんアイディアは泉のように湧きはじめ、あっという間に「イギリス民謡による行進曲」 は完成した。 ”吹奏楽コンクール課題曲”の募集を見たのはそれから1年くらいしてからの事だった。 「せっかく作ったんだし、ダメもとで出してみるか……」そのぐらいの気持ちで応募してみ た。ところがこれがまさかの1次審査通過。とんとん拍子で結局入選してしまった。今まで コンクールに向けて数々の課題曲を吹いてきた自分が、今こうして作曲者としてエッセイ を書いている。 まったく人生というのはおもしろい。何が起こるかわからない。皆さんもダメもとでいろん な事に挑戦してはいかがだろうか。 |
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【略歴と主な作品】
高橋宏樹 たかはし・ひろき 1970年東京生まれ。
東京都立北多摩高等学校在学中に吹奏楽全般を湯本清氏に師事、その後パンスクール・
オブ・ミュージック、アレンジ&コンポーズ科で、映画音楽などを学ぶ。「桜島イメージソング
コンテスト」最優秀賞、「長野県信州中野イメージソングコンテスト」優秀賞、「鳥取民謡アレ
ンジコンテスト」特別賞。
主な作品:「未来への思い出」、アンサンブル小組曲「月森の詩」など。