作曲者から作品に対するエッセイ、および、曲の特徴・解説等

行進曲「虹色の風」
                          作曲者  松尾善雄

 課題曲マーチとしてはこれで3作目になりますが、今回は特にオーソドックスなマー
チ作りにこだわってみました。というのも、前2作('87年「ハロー!サンシャイン」'91年
「そよ風のマーチ」)には、かなりの力みや気負い、気取った点が目立ち、また、マー
チ以外の要素を無理やり取り入れたような不自然さもある、と反省したからです。ここ
はひとつ初心に帰り、最も基本的な、あくまでもマーチらしいマーチを目指してみよう、
と決意して、何とか作り上げたのが今回のこの「虹色の風」なのです。
 従って、目新しさ、独創性などは皆無でしょう。また、「あれっ!?こういう感じのマー
チは、以前どこかで聴いたことがあるなァ……」という印象を与えるかもしれませんが、
実はそれこそが私のねらいの一つだったのです。
 オリジナリティー豊で、歯ごたえのある(?)斬新なマーチは他の方々にお任せして、
私は私で、やさしく楽しく、オーセンティックなマーチをーーと考えた次第です。
 しかし、こういうタイプの曲は公募では目立たないだろうし、客観的に自作を見直して
みても、あまりに平凡、非個性的で、先ず一次審査で落選だろう、と覚悟していました。
されだけに課題曲採用が決まったときには、うれしさよりも驚きの方が大きかった、と
いうのが正直な気持ちでした。
 先日、私の大好きな島田荘司責任編集「21世紀本格」という、ミステリーの中編アン
ソロジーを読みましたが、ミステリーの本質はしっかりと押さえた上で、島田荘司その他
数名の作家がそれぞれの手法で、今の、あるいはこれからの時代の様々な要素を盛り
込んでの競作であり、実に読みごたえがありました。同時に、これはマーチ作りでも同じ
だろう、と感じました。つまり、あくまでもマーチの基本はしっかりと保持しつつ、21世紀を
迎えた今の要素を、どのようにして作品の中に融合させるか?ーー今後の私にとって、
これは一つの大きな”課題”だ、と考えています。

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                 【略歴と主な作品】
松尾善雄   まつお・よしお   1946年高知県生まれ。
独学後、作・編曲家若松正司氏に師事。千葉県浦安市在住。
「日本スーザ協会」会員、作曲集団「風の会」会員。
マーチ最近作:ゴールデン・ライト・マーチ(金光学園音楽部吹奏楽団委嘱作品)、
マーチ「ライジング・グリーン」(さくら銀行吹奏楽団ファイナル・コンサートのためのメモリアル作品)
行進曲「風のハーモニー」(箕面市青少年吹奏楽団委嘱作品)