作曲者から作品に対するエッセイ、および、曲の特徴・解説等

マーチ「列車で行こう」
                          作曲者  川村昌樹

 この、マーチ「列車で行こう」は、子供の頃、列車の通っていない街に住んでいたせいか、
列車に対する思い入れが強くありました。祖母の家に行くと裏庭の丘を越えたところを列車
が通ります。よく時刻を調べては裏庭に列車を見に出かけ、トンネルに入るのを見送ってか
ら帰って来たものです。当時は一日中数往復の列車が走っていましたが、今では、一日五
往復しか列車が走っていない赤字路線です。ディーゼル車が走っているそんな光景を思い
描いてこの作品を仕上げました。
 この曲のモチーフとなったのは、秋田県と青森県の日本海側の県境を走るJR五能線とい
う路線です。機会がありましたら、是非乗ってみてください。雄大な日本海の光景が目に飛
び込んでくるはずです。また、夕方の日本海は格別です。海と反対側には白神山地がそび
え自然の広大さを満喫できる路線です。
 この作品の象徴的なものは、アーティキュレーションの無い16分音符(8分音符)が連続
しているところです。これが列車の走るテーマで、中間部は、トンネルに入ったイメージで構
成されています。課題曲Xという事もあり、それを意識して作ったせいか、難しいというより、
課題の多い作品になっています。マーチにしては珍しく、ソロにフルート、オーボエ、クラリネ
ット、バスーン、アルトサクソフォンを用いています。もちろん小編成で演奏可能なようにも
作ってあります。中間部のアルトサクソフォンのソロは遊び心を持って演奏してみてもよいと
思います。
 また、この曲で面白いところは伴奏が、1小節単位のミニマムな構成になっている点です。
多少の音のぶつかりはありますが、慣れてくると気にならなくなると思います。単純な繰り返
しを伴奏者が行うわけですから、集中力を高めていく必要があるかと思います。
 マーチという概念をちょっと変えてしまうかもしれませんが、この作品に触れて列車に乗っ
た気分になっていただけたら幸いです。では、好演を期待しています。 

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                 【略歴と主な作品】
川村 昌樹   かわむら・まさき   1971年秋田県能代市生まれ。
理工学部経営工学科(人間工学専攻)を卒業後、システム会社勤務。中学から大学まで
ファゴットと指揮を主に担当し、高校時代より作編曲を独学する。
ファゴットは大埜展男氏に師事。現在、東京都新宿区在住。

主な作品:「風の島」ー吹奏楽のための詩曲(1999年度全日本吹奏楽コンクール課題曲公募
「佳作」/CD…ニュー・ウィンド・レパートリー2001/楽譜…全日本吹奏楽連盟)
「樹海」〜管弦楽のために、木管五重奏のための12の小品、サクソフォーンソナタ、など。