作曲者から作品に対するエッセイ、および、曲の特徴・解説等

吹奏楽のための「風之舞」
                          作曲者  福 田 洋 介

 私は以前から、”Hokusai Impressions” というテーマで作品を作り続けています。”Hokusai”とは、
江戸期の高名な絵師・葛飾北斎のことです。
 北斎、広重、写楽、歌麿・・・彼らが世間に打ち出した「浮世絵」は、日本風俗を浮き彫りにした色使い、
バランス感覚、デフォルメ、そして何よりも描かれてる世界観がとても独特です。19世紀末のパリ博覧
会に、日本から出展された「富嶽三十六景」の「神奈川沖」浪裏」を見た。ドビュッシーは、触発されて
交響詩「海」を生み出し、ゴッホは浮世絵の模写を試み・・・・・。
 想像力を掻き立てる浮世絵の持つパワー・・・・・彼らが残したものは、強烈な「日本のオリジナル」なの
だと思います。鎖国下にあった江戸庶民文化のさせる技・・・・という事ではなく、もともと日本人は「文化を
築き上げる力」を持っていたのだと思います。それが強烈に発揮された江戸期、私はタイムスリップしてでも
体験してみたいものです。
 私も及ばずながら、そして生意気にも「日本のオリジナル」をテーマに常日頃より創作しております。尊敬
する葛飾北斎の浮世絵にうかがえる「オリジナリティ」に、少しでも近づけたら・・・・・という、あまり過大な
目標を持ちながら・・・・・。
 さて、今回の「風之舞(かぜのまい)」ですが、やはり写楽の「歌舞伎絵」や「粋(いき)」の世界を、吹奏楽で
創りたかった、という関心がありました。「架空の歌舞伎舞台」を繰り広げるという発想から造りはじめたものの、
いざ出来上がってみれば、「風ニ舞フ」というさらに大きなイメージを感じ、これで題名が決まりました。
 演奏の仕方によって、かなり表情や色彩が変化すると思います。皆様の様々な演奏、舞台、色彩、「風」が、
とても楽しみです。
 最後に、今回2004年度吹奏楽コンクール課題曲となったこと、しかも朝日作曲賞という大きな賞まで
頂けたことはこの上ない喜びです。これを励みに、さらに勉強と創作を続ける所存です。今後とも
よろしくお願い致します。

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                 【略歴】
福田 洋介  ふくだ ようすけ   1975年東京・杉並生まれ。

現在まで作・編曲は独学、中学、高校と吹奏楽を続ける。
高校在学中より劇団の音楽担当などを行う。高校卒業後、音楽制作活動に専念し、
演劇・舞台・映画・TV・イベント等の音楽制作、吹奏楽作品提供と指導、
さらにサラウンドシステムによる音楽・音響デザインにも力を注ぐ。
主な作品:「KA-GU-RA for Band」(平成10年度JBA下谷賞佳作)