第6回北海道バンドミュージックキャンプ(HBMC2018)
兼 吹奏楽指導者研修会開催報告

 3月26日(月)~28日(水)の3日間にわたり、ホテルさっぽろ芸文館、札幌市立啓明中学校(いずれも札幌市)を会場に『第6回北海道バンド・ミュージック・キャンプ兼吹奏楽指導者研修会』が開催されました。毎年この誌面でもご紹介させていただいておりますが、このキャンプは、当連盟理事長である井田重芳氏(東海大学付属札幌高校)が高校時代に体験し、その後、自身の将来に影響を及ぼしたとされる全日本サマー・ミュージック・キャンプ(於・群馬県榛名湖)に端を発し、吹奏楽・音楽を通した「人づくり」をめざし、次世代の音楽文化を担うことができる青少年のリーダー育成を目的として、北海道吹奏楽連盟に加盟する高校生を対象にして行われています。また、今回は例年12月ごろに道内の吹奏楽指導者を対象として行われていた「吹奏楽指導者研修会」と合併しての開催となりました。研修会については、高校生たちの講義内容を自由に見学していただくというスタイルで行われました。
 キャンプの参加生徒は121名。遠くは、道東の網走市や中標津町、道南は函館市からといずれも札幌からは300km以上(中標津町は約400km)離れた地から参加した生徒もいました。研修会の参加指導者は、こちらも道内各地より、35名の先生方に参加いただきました。
 講師陣は、今年もメインディレクターに保科洋氏(作曲家)、中村俊哉氏(バンドディレクター)、そして当連盟理事長の井田重芳氏が担当しました。
 今回のキャンプは、例年行われていたスペシャルコンサートを廃止し、その分、合奏講習の充実を図るというコンセプトで行いました。その内容は、初日と2日目に中村、井田両氏による「基礎合奏講座」と保科、中村両氏による「楽曲指導講座」、そして最終日となる3日目は、札幌交響楽団のメンバーを中心としたプロ奏者による「各楽器別の実技講習会」を実施いたしました。
 さて、キャンプ初日の3月26日。会場となる「ホテルさっぽろ芸文館」に北海道中から高校生たちが集まりました。例年のことですが、生徒たちから発する、独特の緊張感やワクワク感が受付会場をつつみます。そして、迎え入れる我々スタッフも同じようにその雰囲気に自然と高揚します。
 開講式に続き、このキャンプ最初の講座となる講座パートⅠ「基礎合奏講座」では、A群・B群の2つのバンドにわかれ、中村先生、井田先生による各楽器の基本奏法(チューニング方法や音階練習)、基礎合奏の実践方法(ユニゾン・ハーモニー・スケール)などの指導が行われました。この内容だけを並べると毎年同じ内容なのですが、両氏ともに例年とはまた違ったアプローチの仕方で講義されていて、聴講する我々にとっても毎年のことながら新鮮で新しい発見をさせていただくことができました。また、指導の中には演奏技術だけではなく、アンサンブルのために必要なコミュニケーションの重要性についてもお話される場面がありました。とくに今回ほとんど初対面でのアンサンブルでしたが、集まったメンバーをひとつのバンドとして捉え、3日間だけのチームとして、部長、副部長、パートリーダーなどの役職を与え、より日々の各学校での活動の実態に近く、それを意識させた講習として展開されました。このキャンプの目的である「リーダーの育成」に対して、高校生、指導者ともに実感できる講習内容になったのではないでしょうか。研修会に参加した指導者アンケートからも「井田先生のレッスンの合間のお話、中村先生の妥協しない指示、どれも指導者にとって必要な知識と姿勢だと再認識できました」という回答をいただきました。
 そして、この日の夜、講座パートⅡ「楽曲指導講座」では、いよいよ保科先生の登場です。保科先生には4年連続でこの講義を担当していただいております。昨年のこのキャンプのあとに体調を崩され、我々としても大変心配していた中でのお願いでしたが、全くそれを感じさせないいつもと変わらない、いやいつも以上に熱い思いで高校生たちに講義していただく姿に我々もほっとすると同時に、この場では言い尽くせない感謝の気持ちを持たずにはいられません。保科先生の講義内容で毎年感じさせられるのは、技術的な音楽表現のセオリーはもちろんのこと、音楽作品に対するリスペクトの大切さです。そして、それはアマチュアであり、技術的にまだまだ未熟な高校生を相手にしても、またプロのリハーサルであってもその求める内容は全く変わらないということです。

まずはパートごとのコミュニケーションから

今年も講師を務めていただいた中村俊哉先生!

井田理事長による基礎合奏講座!

保科先生登場!

求める音楽は、高校生もプロも一緒!

全道各地から研修会に参加された指導者たち!

 続く、2日目は午前中に講座パートⅢとなる「基礎合奏講座」。午後からは中村先生による「楽曲指導講座」。楽曲を演奏するために必要となる基本的な演奏方法の要素を基礎合奏講座の内容と関連させた講習となりました。そして、この講座の後半では新しい試みとして「部活動運営についての情報交換会」を行いました。井田先生にコーディネーターとして進行役を務めていただき、普段の活動する中でのそれぞれの学校での問題点や悩みを発表し、それに対する他の学校での実践や解決方法を発表してもらい、最後にコメンテーターとして保科、中村両先生からアドバイスをいただくという形式で行われました。受講生アンケートには「他の学校でも自分たちと同じような悩みを持っているんだな…」「先生方のアドバイスは新鮮で今後の活動の活力になった」。指導者アンケートからも「2日目の夕方の情報交換は、ある意味で、受講生徒が望んでいた内容かと感じました。活動の中で、不安に感じていることも限られた時間ではありましたが共有できたように思います。生徒間の炉辺談話や情報交換も交流の一環としてはよいのですが、今回のようにコメンテーターやコーディネーターを、講師として進めた方がより良い解決がみられるのでは」とあるように演奏技術だけではない部活動運営に関しても情報交換でき、受講生にとっても指導者にとっても大変有意義な時間になったのではないでしょうか。
 2日間の合奏に関する細かい講習内容についてこの誌面ですべてをお伝えしすることはできませんが、受講生や研修会に参加した指導者はもちろん、我々スタッフにとっても贅沢で貴重な講習であったことはいうまでもありません。

講座パートⅣ楽曲指導基礎!

日頃の活動の悩みは?

井田先生からのアドバイス

もちろん中村先生からのアドバイスも

そして、保科先生からも深くありがたいお話をいただきました!

保科先生によるアルメニアンダンスの合奏講座!

 最終日となる3日目は、会場を札幌市立啓明中学校に移し、楽器別の実技講習会を行いました。この講座の講師には札幌交響楽団員をはじめ、東京佼成ウインドオーケストラのフルート奏者の丸田悠太氏、サクソフォーン奏者の中村均一氏、ユーフォニアム奏者の牛渡克之氏、東京フィルハーモニー管弦楽団の打楽器奏者である船迫優子氏などを加え、豪華な講師陣で実施することができました。専門家から指導を受ける機会が少ない受講生にとっては、最終日の疲れも見せず生き生きと受講しておりました。

フルート・ピッコロ、丸田悠太先生!

ファゴット、村上敦先生!

サクソフォンは、中村均一先生!

ホルン、山田圭祐先生!

ユーフォニアム、牛渡克之先生!

パーカッション、船迫優子先生!

 今回で6回目を終えた「バンド・ミュージック・キャンプ」ですが、今回の参加者も指導に応える演奏力、生活態度、初めて出会う仲間との交流のどれをとっても高い意欲が感じられ、このキャンプに参加する目的を十分把握して積極的に受講していました。前述したアンケート結果や聴講された指導者の声からも、このキャンプが道内の高校生に浸透し、定着されつつあることを実感するこのキャンプは、なくてはならないイベントとなっております。しかしながら、第1回目から多大なるご協力をいただいているさっぽろ芸文館、ニトリ文化ホールはこの夏で閉鎖、解体が予定されています。このキャンプの開催にあたっては、様々な条件が揃って初めて叶う催し物です。会場の条件等、多くの課題に向き合いながら、今後も当連盟では、この未来の若者たちのためにさらなる充実を目指したキャンプも含めた講習会の実施、そして、吹奏楽を通した北海道の音楽文化の発展と向上にどのように関わっていけるかという大きな課題に向かって諸活動を続けていく所存です。
 最後になりますが、このキャンプの開催が、今回も予定どおり開催できましたのも講師の皆様やさっぽろ芸文館、札幌市立啓明中学校はじめ関係機関のご協力あってのことと感謝しております。そして、今後も当連盟の様々な活動をあたたかく見守っていただければ幸いです。

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